「戦雲の夢」司馬遼太郎

●●●「戦雲の夢」司馬遼太郎 講談社文庫●●●

「自分を賭けるだけでよい。賭ける、というそれだけにのなかに、男の人生がある。賭けの結果は、二のつぎにすぎない。」

「夏草の賦」に続いて、長曾我部の物語。長曾我部元親の孫、長曾我部盛親の一生を描いたお話。「戦雲の夢」の続き、司馬遼太郎作品のベスト5に入る傑作だと思います。司馬作品のエンディングは、「そしてすべて消え終わった」という、時代の空しさを感じさせるものが多いけれど、この作品は違います。盛親がどのような最期を迎えたのか、読者にその結論をゆだねる、司馬さんにしてはめずらしく余韻のある終わり方。うさぎは、司馬さんはこの長曾我部盛親がとても好きだったと思うなあ。
戦国の謀略者、元親を祖父に持つ盛親ですが、関が原の戦いの後、京都に軟禁され、男として空しく朽ちていくしかない人生を送っていました。女遊びに明け暮れ、自暴自棄な日々。昔からの長曾我部の臣下たちはそんな盛親を心配します。しかし彼らも長曾我部が滅ぼされた後は、他の大名の家臣になったりして録を稼がないとならない。でも、盛親のことが忘れられず。そんな時、天下に風雲が。大阪冬の陣が勃発するのです。盛親は今こそ、自分の運命をかけるときと、大阪城に入るのです。この、大阪城への入り方が、もう、感動。涙、涙。司馬さんはこの場面を切り取った短編を別に書いているくらいです。一人、五条へ向けて歩いていく盛親の背後には、1人、また1人と、長曾我部の旧家臣たちが、戦闘準備をして加わっていくのです。盛親が立つと聞いた家臣たちは、戦雲の夢に、長曾我部の夢に、自分たちの命を燃焼しつくす決意とともに、盛親に従い、大阪城へ入城していったのです。大阪城へ入る頃には、長曾我部の家臣たちは100人以上に膨れ上がっていたのでした。
しかし、盛親と家臣たちのその後には、冬の陣、夏の陣の敗戦が待っています。この大阪城での戦いには、様々な有名人(後藤又兵衛とか真田幸村とか)も登場してきます。ここら辺も涙もの。もう、勝利はないとわかっているのです。でも、彼らにとっては男としての最後の花を飾る、武将として立派に戦う、これこそ人生の目標と定めていて、もはや、勝敗を問わないと悟っているのです。もう、この後半は、盛親というよりも、戦国武将たちの最後の仇花が咲いた、その様子に、もう涙し、感動するのです。
盛親を取り巻く人物達も魅力的です。お里という、盛親を立ち直らせた最後の女。それに雲兵衛という元忍者(盛親にほれ込み、友垣だと思っている)、盛親のめのと子、弥次兵衛。みんな魅力的で生き生きと描かれています。
大阪城が落ちた後、盛親はどうなったのか。史実を信じるのか、伝説を信じるのか。司馬さんは自分なりの答えを出してこの小説を終わらせています。でも、この本を読み終わった読者の答えも、おそらく、司馬さんと同じ答えではないだろうか。そういう意味で、余韻の深い、司馬作品です。もう、ほんと、オススメです。

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この記事へのコメント

こめ
2016年02月13日 10:44
孫?

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