「箱館売ります 土方歳三蝦夷血風録」 富樫倫太郎 中公文庫

「おれが考えているのは、その土俵の中で、おれも武士として死にたいってことだ。武士ってのは死に際が一番肝心だから、どうすれば、このきれいな土俵の中できれいに死ねるかってことをいつも考えているわけだ。近藤や沖田はあまりいい死に様じゃなかったようだから、あいつらの分までおれが武士らしく死んでやろうと思うんだ」
(中略)
鉄之助はもう口を開かなかった。
いや、言葉を発することができなかったのだ。
涙が出て仕方がない。
なぜ、そんなに涙が溢れてくるのかわからない。
ただ、自分が仕えているこの不器用な男のことを好きで好きでたまらないと思うだけだ。
(土方先生と一緒に死にたい)
そういう熱烈な思いが鉄之助の胸一杯に満ちている。
その思いが苦しいほどであり、言葉を発することができなかったのである。

(最終章より)


これは、いい。この本は、いい。すごく、いい。土方歳三様好きなら、魂が揺さぶられます。

土方歳三様が主人公ではないのですが、副主人公くらいの位置づけなのですが、でも、やっぱり、物語の中心なんです。土方歳三という男の在り方、精神が、この物語のキモになっているのです。

実際にあったガルトネル開墾条約事件という、箱館の土地をプロシア、影にいるロシアが、買いとろうとする事件で、これに、箱館政府と、官軍側と、そして箱館の人達が、それぞれの信念と思惑で、サポートしようとしたり、阻止しようとしたり。それは、幕府側とか官軍側とか、そういう単純な区切りで終わる話ではないのです。函館戦争は、幕府軍と官軍が戦い、土方歳三様が華々しく戦って・・・っていう語りになる小説が多いですが、この本は違います。視点がオリジナル。感心しました。

歳三様好きに嬉しいのは、物語の進行の中で、歳三様のエピソードがちらちらと垣間見れて、それが嬉しいのです。歳三様が主人公の物語よりも、かえって、歳三様のリアルな像が見れて、ツボです。
たとえば・・・

歳三様が食事をとても優雅にする、お米を一粒も残さないこと、とか。
歳三様が小者にすごくやさしいこと、とか。
歳三様が箱館にまで石田散薬を持ってきれ、怪我した者に配っていること、とか。
箱館では女も酒も遠ざけて、時間があると馬で遠乗りしていること、とか。
歳三様が市村鉄之助を一緒に馬に乗せて駆ける、とか。
歳三様の鉄之助へのいたわり、とか。


歳三様好きには、胸がきゅんとするシーンが散りばめられていて。
でも、それだけでなく、歳三様の新選組や、近藤さんや沖田くんへの想いや、京都での日々の話も垣間見れて、とても切なく、とてもかっこいい。そう、富樫さんの描く歳三様はすっごく粋でかっこいいのです!
もちろん、戦闘シーンもありまして、歳三様の軍神ぶりも如何なく発揮されております。
土方歳三様好きの人には、この本、絶対的おススメです。

榎本武揚さんもすごくいいですよ。おそらく、本当に、こういう人だったんじゃないかなあ。榎本さんと歳三様の最後の会話はじーんときます。

あと、歳三様の白いスカーフ。これがですねえ。すごく効いているのです。いいお話でした。

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この記事へのコメント

曾我廼家光龍
2014年08月03日 11:38
管理人様こんにちは。出来れば小説現代に連載中の「風の如く」もしも実写映画化される様であれば、愚生が脚本を書いても良いで~す! 主人公は矢張り、東京・八王子出身のtakizawa某でしょうね~。(笑)

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