「ラストワルツ」柳広司 角川書店

ミスタ・ネモ。誰でもない男・・・。

ジョーカー・シリーズの最新作。第二次世界大戦直前の時代の波の中、日本陸軍の諜報機関、D機関の結城中佐が繰り広げるスパイ物語。だまし、だまされ、読者もまったくだまされる。ドキドキするスパイ小説です。このシリーズはほんと、読み始めたらやめられない、かっぱえびせん的作品であります。

相変わらず、結城中佐がかっこいいのですが、結城中佐はあまり作品の全面に出てこないのですよねえ。その部下が活躍する背景に結城中佐の影が見え隠れするというか。でも、この本の中の「舞踏会の夜」の中では、結城中佐が前面に出てきます、しかも「女」からみで。もっとも主人公は結城中佐ではなく、有閑華族の顕子さんなのですが。彼女が少女の頃暴漢から助けてくれた結城中佐と、もう一度会いたいと願う中、時間が過ぎていき、20年後、とうとう再会します、仮面舞踏会で。結城中佐が顕子の前に姿を現し、ワルツを踊ります。結城中佐が現れたのは、スパイ活動の一環だったのか、それとも顕子との約束を果たすためか・・・。答えはつまびらかにされないまま終わりますが、なんとなく、私は両方だったのかな、と。単にスパイ活動の一環なら、結城中佐自らが、顕子の前に姿を現し(いくら仮面舞踏会で仮面をかぶっているとはいえ)、わざわざワルツを踊る必要はなかったのかな、と。冷徹で感情を削ぎ落した感じの結城中佐にも、わがままなじゃじゃ馬娘の顕子に惹かれる思いがあったのではないかな、と。ロマンチックすぎますかね?でも、私はこの「ジョーカー・シリーズ」ではこの「舞踏会の夜」が一番好きです。

他に「アジア・エクスプレス」「ワルキューレ」の二作が入っています。

しかし、結城中佐、D機関の活躍もむなしく、日本は勝ち目のない戦争に入り込んでいくのですよねえ。いくらすばらしい情報を得ても、それをどう使うのか、によって未来は全然変わってしまうわけです。第二次世界大戦の後、日本が敗戦を迎えた後の、結城中佐がどうなるのか、そういう話も読んでみたいですね。

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この記事へのコメント

やっくん
2015年08月05日 21:08
初めまして!
私もこの柳広司さんの“D機関シリーズ”大好きです♪
記事TBしていきますので、よかったら当方にもコメいただけると幸いです。

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